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6月 新しいレッドリストを見てみよう 意外な鳥に絶滅の恐れが!
人間活動の影響で数を減らす鳥たち

 自然系のメディアなどを見ると,「この生物は絶滅危惧種です」「この生物はレッドリストに載っています」というフレーズをよく見聞きします。いずれのフレーズも対象となる生物に絶滅の恐れがあることを言っており,現在,多くの生物が環境改変や乱獲,外来種といった主に人間の活動の影響で数を減らしています。こうした生物のリストが「レッドリスト」,さらに数を減らした要因や現在行われている対策などをまとめたものが「レッドデータブック」です。

サンカノゴイ(絶滅危惧IA類)。成熟個体の数が30羽程度と絶滅の危険度が極めて高い。開発によるヨシ原の減少が存続を脅かす要因とされる
アカアシシギ(絶滅危惧IA類)。北海道東部の繁殖地が縮小傾向にあること,渡りの中継地や越冬地になる琉球列島の干潟が減少していることで数を減らしている
絶滅リスクに応じたランク分け

 レッドリストは実は1つではありません。最もよく知られているのが,環境省が発行しているものですが,そのほかに都道府県や市町村,国際団体のIUCN(国際自然保護連合)が発行するレッドリストもあります。ここからは環境省のレッドリストを元に話を進めましょう。日本の鳥のレッドリスト(環境省版)が最初につくられたのは1991年のことでした(当時は環境庁)。その後はおおむね5年おきに更新されており(※),最も新しいレッドリストは今年(2026年)に公開された第5次リストです。掲載されている鳥はその絶滅のリスクに応じて8つのランク分けがされ,この中でいわゆる「絶滅危惧種」とされるのは,深刻な絶滅の危機に瀕している「絶滅危惧IA類(CR)」,絶滅の危機に瀕している「絶滅危惧IB類(EN)」,絶滅の危険が増大している「絶滅危惧II類(VU)」の3カテゴリーです。レッドリストは更新のたび,その時々の最新の分類や調査データが反映されています。どのような種が新たに入ったのか,そのランクがどう変わったのかはバードウォッチャーにとって大きな関心事となっています。今回の第5次レッドリストに掲載された鳥は170種にのぼり,30種の鳥が新たに追加,逆に14種の鳥がリストから外れました。
※レッドデータブックはおおむね10年ごとに見直されており,最新版が現在順次公開されています。

コアジサシ(絶滅危惧IB類)。繁殖に適した裸地が草地や造成地になったり,カラスなどによる卵や雛の捕食で個体数が急減している
オオアジサシ(絶滅危惧IB類)。繁殖地の1つである小笠原諸島の西之島で火山活動が活発になり,繁殖地が消失したことで数を減らしている
第5次レッドリストの鳥 ~絶滅リスクが上がった鳥

 新しく30種の鳥がリストに加わり,さらにリストに入っていた種のうち25種のランクが上がったことからもわかるように,現在の日本では絶滅リスクが上がっている種が数多くいます。この中にはコトラツグミやダイトウコノハズク,イイジマムシクイのような,もともと絶滅リスクの高い離島の種もいますが,その一方で身近な鳥と思われているキンクロハジロゴイサギ,ハマシギといった種がランクに入ったことは,バードウォッチャーに驚きをもって受け止められています。
 例えばキンクロハジロは淡水域,海水域の両方で見られる身近なカモで,これまでリスト外でしたが,今回初めて絶滅危惧II類に入りました。同じような環境で見られるホシハジロスズガモもリストに入っており,これは主にアサリなどの貝類をよく食べる生態が関係しています。湖沼や河川,海岸が開発され,水質が悪くなったことでアサリが減ってしまい,個体数が急減しているとされます。
 ゴイサギも身近なサギの仲間で,絶滅に瀕している鳥というイメージはあまりないかもしれません。しかし,同じ小形サギ類であるコサギササゴイと一緒に今回初めて絶滅危惧II類に指定されました。その要因として,これらのサギの主な食物となる小形の魚がブラックバスなどの大形の外来魚によって減少したほか,サギ類はコロニー(集団繁殖地)をつくる生態をもつため,住宅地付近などにできたコロニーが追い払いの対象になるといった人との軋轢も指摘されています。
 ハマシギはこれまでも準絶滅危惧というカテゴリーでしたが,絶滅危惧II類にランクが上がりました。渡りの時期の干潟で大きな群れをつくって飛び回る場面がよく観察できますが,以前より群れの規模が小さくなったという観察者の声を聞きます。ハマシギを含むシギ・チドリ類はその多くが数を減らし,今回のリストでは12種が絶滅危惧種です。渡り鳥の場合,繁殖地・中継地・越冬地いずれかの環境が悪化すれば,絶滅のリスクは上がります。地球規模で渡りをするシギ・チドリ類の場合,日本だけの話では済まないため,国際的な取り組みが重要です。このように,今回のレッドリストでは特に水辺の鳥で絶滅リスクが上がったと判定された種が多いことが特徴の1つです。

キンクロハジロ(絶滅危惧II類)。全国に分布するが,数千羽規模の群れを見られる場所が急減しているという
ゴイサギ(絶滅危惧II類)。サギ類のコロニーの優占種だったが,近年は急減している。全国鳥類繁殖分布調査でも,記録地点数が236→93と半分以下に減少した
ハマシギ(絶滅危惧II類)。干潟や湿原の減少が影響しているが,特に春の渡りの時期に見られる個体数の減少が著しい
ハマシギの群飛
第5次レッドリストの鳥 ~絶滅リスクが下がった鳥

 多くの鳥の絶滅リスクが上がる中,絶滅リスクが下がった鳥もいます。日本の絶滅危惧鳥を象徴する存在であったトキコウノトリは,かつて野生絶滅というカテゴリーでしたが,今回のリストで絶滅危惧IB類にランクが下がりました。両種とも日本から野生個体は一度絶滅しましたが,海外から導入した個体を飼育下で繁殖させて放鳥する「再導入」という手法で野外の個体数を増やすのと並行し,これらの鳥の採食場でもある水田で有機農法を行い,食物となる生物を増やすといった環境整備を行うことで,野外での個体群の創出に成功した例です。ただし,こうした里地里山の自然環境の保全は,後継者不足という課題があり,状況は改善していますが,絶滅危惧を脱するところまでは至っていません。
 一方,南西諸島の固有種に目を向けると,例えば沖縄島のノグチゲラは絶滅危惧IA類からIB類へ,アマミヤマシギやオオトラツグミに至っては絶滅危惧II類から準絶滅危惧になっています。これらの種はトキやコウノトリのような飼育下繁殖や再導入は行われておらず,生息状況の改善の理由としては林業の縮小のほか,肉食の外来哺乳類であるフイリマングースの駆除の進展や根絶が挙げられています。

トキ(絶滅危惧IB類)。日本在来の個体群は1981年に野生絶滅。中国から贈呈された個体の飼育下繁殖が順調に進み,2008年から佐渡島で再導入を開始。2026年5月には石川県でも再導入が始まった
コウノトリ(絶滅危惧IB類)。日本在来の個体群は1971年に野生絶滅したが,2005年から始まった再導入によって数を増やし,現在は国内の12府県での繁殖が確認されている
オオトラツグミ(準絶滅危惧)。生息地である奄美大島でのフイリマングースの根絶により,生息状況が大幅に改善し,今回の改訂で絶滅危惧種から外れることとなった
ノグチゲラ(絶滅危惧IB類)。オオトラツグミ同様,フイリマングースの防除事業の成果で生息域や個体数が増加傾向だが,こうした対策がなければ減少に転ずると予測されている
バードウォッチャーが絶滅の要因に?

 レッドデータブックには多くの絶滅危惧鳥の状況がまとめられていますが,気になる記述があります。それは「カメラマンの存在が絶滅リスクを上げている可能性がある」です。例えばアカモズチュウヒオジロワシヒシクイなどで観察・撮影目的の人が生息地や繁殖地に立ち入ることが悪影響として指摘されています。絶滅危惧種=希少な種であり,観察・撮影したい気持ちが出てしまうものですが,対象となる鳥がいなくなってしまっては元も子もありません。野鳥観察が鳥の生息を脅かすことがないよう,自分が今している観察や撮影が将来,あるいは次世代でも続けられることなのか,冷静になって考えるときなのではないでしょうか?

チュウヒ(絶滅危惧IB類)。繁殖地のヨシ原の衰退のほか,カメラマンによる巣近くへの立ち入りや巣の前の植物の刈り取りで繁殖放棄に至った事例があるという
ヒシクイ(写真は亜種オオヒシクイ,両亜種とも準絶滅危惧)。越冬地で釣り人やカメラマンによるねぐら入りの妨害が確認されているという