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バードウォッチングをするにあたり,自分で観察フィールドを探し,自分で機材を揃え,そして自分で鳥を探して歩く――それはバードウォッチングの醍醐味ではあるのですが,初心者にはちょっとハードルが高いかもしれません。そんなときに強い味方になってくれるのが,各地にある観察施設です。
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地図やガイド本を見ると,『○○ネイチャーセンター』や『○○野鳥の森』といった名称の施設を見つけることがあります。こういった場所は地域の自然や野鳥を紹介する観察施設といえるのですが,バードウォッチングにおすすめの施設となると選び方にコツが必要です。では,「初心者が安心して鳥を見られる」施設とはどんなものでしょう?
まず第1に挙げるのは,探鳥地の近くにあるということです。例えば街なかの公園でも「野鳥の森」と書かれた一画が設けられることがあるのですが,そういった場所の中には,「周辺で見られる鳥」のような簡単な案内板とトレイルルートが整備されているだけの場所も少なくありません。経験を積んだ人であれば,どこに目を付ければ鳥を見つけられるか,その場所・季節ではどんな鳥が期待できるかといった部分を知識や経験で補えるのですが,初心者にはちょっとハードルが高いこともあります。一方,図鑑やガイド本にも出てくるような探鳥地の近くに観察施設があれば,少なくとも鳥は見つけやすい場所にあるはずなので,その点で安心できます。
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第2に挙げるのは,鳥を案内できるスタッフがいるということです。観察施設のスタッフは,定期的にエリアを巡回し,野鳥に限らずさまざまな自然の情報を蓄積しています。いかにバードウォッチングの経験が長い人でも,その現場に長くいる人の経験と知識に勝るものはありません。「今の時期にあの場所に行けば,○○に会えるでしょう」といった現場の生きた情報は初心者にはとても心強いものです。エリア内の危険な場所など,安全なバードウォッチングに役立つ情報も提供してもらえますし,自然観察において頼もしいアドバイザーになってくれることでしょう。またそういった情報を掲示している場所があれば,探鳥に行く前に必ず見ておくようにしましょう。常設の案内板には書かれていない,珍しい鳥の情報が載っていることもあります。
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第3に挙げるのは設備が充実していることです。例えばそのエリアの環境や,なぜ鳥が多く見られるかを解説する展示を見るのは勉強になりますし,鳥に関係する本が開架されている図書コーナーがあれば,図鑑を見比べて購入の参考にすることもできます。また,水辺に隣接する観察施設の多くは来館者が使える双眼鏡や望遠鏡が設置してあり,それを使って鳥を観察できます。機材の使い方をスタッフに聞いてみたり,さまざまな機材を比べることで,自分の機材選びの参考にもできるでしょう。こういった鳥見に直接関係する設備以外にも,トイレや食事ができるスペース,駐車場や子ども向けの遊具,時期によっては常設展示以外の企画展示などをやっていることもあり,家族みんなで鳥や自然に触れあえる場所として整備されている施設もあります。
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これら3つのポイントを満たしているかどうかは,施設の名称だけではなかなか判断できないものです。近年は多くの施設がオリジナルのホームページを開設しており,施設紹介や利用案内,最新の自然情報などを掲載しています。インターネットで検索し,ホームページを事前に参照できれば安心です。
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バードウォッチング向けの観察施設を見つけたら,さっそく出かけてみましょう。入館したら,まずは館内の掲示を見て,最新の自然情報を確認して,現地の天候や日の出・日の入り時刻,海辺に面した施設であれば潮汐の時間などを確認すれば,その後の観察に役立ちます。案内スタッフがいれば声を掛けてみて,最近出た鳥などの話を聞いてみるのもよいでしょう。現地の情報を収集できたら,館内展示を見たり,あるいは設置されている望遠鏡や双眼鏡などを使って,館内からの鳥見を楽しんでみましょう。もちろん館外で鳥を探すのもOKです。施設に隣接した観察ルートには,観察時に鳥から人の姿が見えにくいように,「ハイド」が設けられていることもあります。窓から静かに双眼鏡や望遠鏡を向ければ,思いのほか近くで鳥を観察できるかもしれません。また,来館者向けに観察イベントが行われることもあります。スタッフの話を聞いたり,ふだんは入れない場所に特別に入れるイベントもあるので,積極的に参加してみましょう。
最後に利用のときに心がけてほしいことをいくつか挙げます。まず観察施設にはバードウォッチャーだけでなく,地域住民や一般来館者,校外学習できている児童・生徒など,さまざまな人が訪れています。マナーを守り,スペースや設備を長い時間独占することなく,譲りあって利用するようにしましょう。また,おもしろい鳥の行動や珍しい鳥のほか,何か気になる物事を見たら,それをできるだけ詳しくスタッフに伝えて,情報をフィードバックしてみましょう。施設の自然情報の蓄積にも役立ちますし,他の利用者にとっても貴重な情報となります。近くにお気に入りの施設があれば,そこをマイフィールドにして通い続けると,バードウォッチングの経験がどんどん増えていくことでしょう。
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