紅葉の季節も終盤を迎え,冬が迫ってきています。冬と言えば,ウィンタースポーツ以外はあまり外で活動しないイメージの季節ですが,ことバードウォッチング関しては,冬こそがベストシーズンです。冬は木々の葉が落ちて見通しがよくなり,また多くの冬鳥が渡ってきてにぎやかになります。今回はそんな冬のバードウォッチングで,初心者に特にオススメしたい鳥,「カモ」を紹介します。
「カモ」といえば,バードウォッチャー以外にもよく知られた鳥です。それは「鴨鍋」や「鴨南蛮」といった食材としてかもしれませんが,野鳥としてのカモも「水面にぷかぷか浮いている鳥」と言えば,何となくイメージできるでしょう。実は日本には約40種類のカモがいて,多くは春〜夏にロシアなどの日本より北の地域で子育てをして,秋に日本へ渡ってきて冬を過ごします。カモは川だけでなく,海や公園のちょっとした池でも見られ,さらによく群れを作ります。体のサイズも大きく,群れで開けた水面に浮かんでいるカモは見やすく,また1つの集団にいろいろな種類がいることが多いので,どんなカモがいるのか観察することも楽しいです。
そんなカモを見ていると,目につく派手な姿のカモのそばに,地味な姿のカモが一緒にいることが多いのに気づきます。初心者のうちは,大まかに「派手なほうはオスで,すぐそばに地味なほうがいたら,それは同じ種類のメス」と覚えてOKです(※)。実は日本にやってきてすぐの時期,カモはみんな地味な姿をしているのですが,季節が進むにつれて羽根が生え変わり,オスはきれいな姿に変わっていきます。
※冬に地味な姿をしているカモの中には,メス以外に若いオスも混じっていることが最近わかってきているのですが,見分けるのはとても難しいので,ここでは詳しくは紹介しません。
冬に渡ってきたカモたちの観察の見どころを2つ紹介しましょう。まず1つは「食べるシーン」です。カモは水草や水中の小動物など,さまざまなものを食べているのですが,その食べ方は大きく2つのタイプがあります。1つは体を完全に水中に沈める「潜水採食」タイプ,もう1つは体の一部は水面上に出ている「水面採食」タイプです。この2タイプは食べ方以外にも,体の作りや住んでいる場所などが違うので,見ているカモがどちらのタイプなのか,観察してみるとおもしろいでしょう。
もう1つは「恋のシーン」です。日本で春まで過ごすカモたちは,冬の間にペアを作り,春になると一緒に繁殖地に渡って子育てを始めます。そのため春が近づいてくると,メスを巡るオスの争いや,メスへの求愛行動が見られるようになります。そもそもオスのきれいな羽はメスへの求愛の1つなのですが,その羽を見せつけるようなポーズをしたり,鳴きながら泳ぎ回るなど,いつもとは少し違うユニークな行動を見ることができます。
ところで,水面に浮かんでいる鳥はカモだけではなく,カモのような姿をしているけれど,実はカモじゃないという,いろいろな種類の鳥がいます。例えばカモより小さく,丸っこい姿をしていて,よく潜水するのはカイツブリ。全身が黒く,くちばしが白いオオバンや赤いバンは,姿は大きく異なりますがツルの仲間で,特にオオバンは最近数が増え,冬になると各地で姿が見られるようになりました。このほかに,潜水して魚を捕ることが専門のカワウやウミウも水面に浮かんでいるところがよく見られます。水面という同じ環境で暮らしているので,体形や行動が似てきています。これらの鳥たちも冬になると見やすくなるので,冬はぜひ水辺に行って,いろいろな水鳥たちに親しんでみてください。