バードウォッチングとは鳥を見る趣味です。でもそこにはどんな楽しさがあるのでしょうか?
例えば「鉄道が趣味」といった場合,鉄道写真を撮る“撮り鉄”,実際に鉄道に乗る“乗り鉄”,鉄道車両を研究する“車両鉄”,ただ車両のフォルムや走る姿を見て楽しむなど,さまざまな楽しみ方のスタイルがあります。もちろんバードウォッチングにもさまざまなスタイルがあるので,それを知って自分が「できそう・楽しそう」と思うものを選んではいかがでしょう。
最初はあまり難しく考えず「鳥を見ているだけで楽しい」「鳥を見ていると癒やされる」「かわいい,キレイ!」などと感じられれば十分です。でも、慣れてくると鳥ごとの細かい違いが見えてきます。そもそもバードウォッチングの“watch”という英単語の意味は「観察する」です。単に「見る(look)」,あるいは「見える(see)」ではなく,目の付けどころを意識して鳥を見るのが,バードウォッチングです。いる環境や止まっている場所といった広い視点から,体形,羽の色,嘴や足の形,しぐさ,声といった細かい視点まで,目の付けどころは無数にあります。鳥を見つけたら,まずは10秒間,じっくり見てみましょう。
おおよそすべての鳥には「名前(種名)」が付いています。自分が見た鳥がどんな名前(種名)かを知るためには,環境や時期,体形や羽の色,声などさまざまな情報をもとに図鑑を調べます。スズメ,メジロやカワセミのように,特徴がはっきりしている鳥もいれば,カモ類の雌やシギ・チドリ類のように,どれもよく似ている鳥もいます。特に難しい鳥について,間違い探しのように微細な違いを探して見分けることも,バードウォッチングの楽しみの1つですが,慣れるまでは,カモ雌,シギ・チドリ類は?マーク付きにしておいて,比較的判りやすい鳥だけを覚えていってもいいでしょう。
こうやって見て知った鳥の名前を記録することを,バードウォッチングの世界では「ライフリストを付ける」といいます。日本の鳥はおよそ550種類いるのですが,これをできるだけ多く見ようとするのもバードウォッチングの楽しみの1つです。550種の中にはこれまで日本で数回しか記録のない鳥やある季節にしか現れない鳥,離島など限られた場所にしかいない鳥もいるので,400種以上見ている人はかなりの経験者といえます。図鑑の観察した鳥のページやノートに,見た時期・場所などを書き込んでいくコレクション的な楽しみ方です。
近年,急速に広まっている楽しみ方が「鳥の写真を撮る」ことです。もちろん以前から鳥の写真を撮る人はいましたが,カメラやレンズが高価であったり,フィルム現像のコストがかかることから,鳥写真を楽しむ人は限られていました。それがデジタルカメラの普及で写真撮影のコストは大きく下がり,初心者でも気軽に鳥の撮影を始められるようになり,今ではバードウォッチングの中心的な楽しみ方の1つになっています。
写真を撮れば,自分の見た鳥の記録を画像として残せるし,他の人と共有することも簡単です。珍しい鳥の画像は,それを証拠として記録に活用できます。また,見分けの難しい鳥の場合,現場で撮影して,後でパソコンなどで画像を拡大してゆっくり調べることもできます。さらに撮影した写真を作品としてコンテストなどに発表したり,プリントして部屋に飾るなど,楽しみ方はグンと広がります。バードウォッチングはその名の通り「観察・記録する」が中心の趣味だったのですが,そこに「写真」という“手元に残るもの”が加わることで,より魅力的になったと言えます。
ただし,鳥を撮影する人が急速に増えたことで,鳥の生態に悪影響を与えたり,撮影者同士のトラブルなど,マナー問題という功罪の“罪”の部分がクローズアップされることも増えています(マナー問題については,また別の機会で取り上げる予定です)。
ここまでバードウォッチングの主な楽しみ方として「観察する」「見分ける/記録する」「撮影する」の3つを紹介しましたが,もちろんこれだけではありません。美しい声で鳴く鳥の声を録音する楽しみ方,スケッチや絵,クラフトなどで見た鳥を表現する楽しみ方,少し変わったところでは,鳥の羽や足跡など,フィールドに残った鳥の痕跡を集める楽しみ方などなど,バードウォッチャーの数だけ,いろいろな楽しみ方があります。皆さんも鳥に興味が出てきたら,自分のスタイルで,自由にバードウォッチングを楽しんでください。