皆さんは“野鳥観察”“バードウォッチング”にどんなイメージをもっていますか?
「双眼鏡をのぞいている」
「大きなカメラを構えている」
「鳥の数を数えている」
——だいたいこんな感じかと思います。バードウォッチングとは,直訳通りに「鳥を観察する」ことですが,そのスタイルや目的はいろいろあります。このシリーズではバードウォッチングのさまざまな楽しみ方を紹介します。
ところで「鳥を見る」のは特別なことでしょうか?そんなことはありません。例えばふだんの通勤や通学の間でも,道ばたにいるスズメや電線に止まって鳴いているカラス,水場があれば白いサギや色とりどりのカモなど,さまざまな鳥に出会うことができます。案外,鳥は近くにいるのです。
これがほかの動物だとそうはいきません。例えばよく知られたほ乳類のタヌキやネズミなどは,日常で出会う機会はあまりありません。ヘビやトカゲといったは虫類,カエルなどの両生類も,よほど探さなければ姿を見ることは簡単ではありません。水中にいる魚にいたっては,かなり条件に恵まれない限り,野生の姿を見るのは難しいです。
昆虫はどうでしょうか?春はチョウが舞い,夏はセミが鳴き,秋はトンボが飛ぶ——などなど,割とよく見ます。私たちが日常で見る動物といえば,この昆虫と鳥がほぼすべてといってよいでしょう。でも,意識しなくても目に入ってくる昆虫に比べ,多くの鳥は少し意識して「探す」必要があります。だから,「バードウォッチングをしている」と人に話すと,「そんなに鳥っているの!?」と驚かれることも少なくありません。
では,どうやったら鳥がいることに気づくでしょうか?そしてどこを見れば鳥はいるでしょう?詳しい方法はまた別の機会に紹介しますが,最初は難しいことは考えず,「鳥は身近にいる」と意識するだけで十分です。例えばこの時期になると梅の花が咲きはじめますが,「鳥がいる」と意識していれば,黄緑色のかわいいメジロを見る機会は多いですし,通勤中の電車が川を渡るとき,水面にたくさんのカモが浮かんでいるのにも気づくでしょう。空を見上げれば,カラスやヒヨドリが飛んでいるのが見えるはずです。
人間は目から入る大量の情報の中から,意識しないものや不要なものをカットするものです。ですから,逆に意識しさえすれば,鳥の存在にはけっこう記憶に残るわけです。
最初にバードウォッチングのイメージとして「双眼鏡をのぞいている」を挙げましたが,これはバードウォッチングの中のほんの一場面にすぎません。もちろん,双眼鏡で探す場面もありますが,大半は自分の目で鳥を探す→見つけた鳥を双眼鏡で観察するという手順を踏んでいます。
実はこの「双眼鏡なしでバードウォッチング」に慣れると,本格的なバードウォッチングでもとても役に立ちます。それに,鳥を身近な存在としてとらえ,実際に鳥に出会えれば,ふだんの通勤や通学もちょっと楽しく感じられるはずです。まずは「鳥って意外に近くにいる」と思うところから,はじめてみませんか?