冬鳥というとハクチョウやカモ類などがすぐに思い浮かびますが、実は身の回りの公園で見かける小鳥にも冬鳥はいます。また、10月のコンテンツで野鳥の発見ポイントを紹介したように、冬鳥ではないけれども葉が落ちると見やすくなる小鳥もたくさんいます。今回のテーマはそのポイントを使って、冬に身近な都市公園でも観察できる、かわいい小鳥たちを紹介したいと思います。
ウソは冬に平地でよく見られるようになる小鳥です。ふっくらとした体型をしていて、口笛を吹くかのようなフィという鳴き声をしています。オスは頬から喉にかけて鮮やかな紅色をしています。また、お腹までうっすらと赤いアカウソという亜種も冬鳥としてやってきます。ウソは桜のつぼみをよく食べてしまうので、例年よりサクラの開花が少なくなってしまうこともあるほどの食いしん坊な鳥です。
頭でっかちな印象を受けるこの鳥は冬に日本にやって来る冬鳥です。嘴はドングリなどの堅い果実をかみ砕いて食べるために太く大きな形状をしています。オスとメスで羽と嘴の色がわずかに異なります。群れを作らず1~数羽でいることが多く、チィと木々の中や飛翔中に鳴き声が聞こえるだけなので発見するのは大変かもしれません。ただ、類似種がいないので双眼鏡に入れられればすぐに分かりますよ。
地面に落ちた種子を食べるシメ(左)(千葉県野田市 撮影/安齊友巳)
小鳥と言うにはすこし大きめですが、冬を代表する鳥なので紹介します。ツグミは開けた草地でよく採餌をします。飛び立つ時にクエッ、クエッと鳴くことが多く、また背筋を伸ばしては走り、また伸ばしては走りと周囲の警戒を怠りません。地域にもよりますが、春先まで日本で過ごすため、他の冬鳥と比べて滞在期間は長めです。色合いは地味ですが、つぶらな瞳をしています。
最近、かわいい小鳥として写真集まで出すようになった、野鳥界のアイドルです。丸っこい体つきと長めの尾羽、クリッとした瞳、ゆるキャラのような体つきが人気を引きつけるのでしょうか?北海道には亜種であるシマエナガが分布しています。エナガに比べて頭部が真っ白!魅力に尽きませんね。繁殖期は目立たずひっそりと繁殖しているこの鳥は冬には人目につく街路樹や庭木にも堂々と出てきます。採餌に夢中で全然逃げないこともしばしば。邪魔にならないよう、でもじっくり観察していたい鳥ですね。
ご存じの方も多いかと思います、胸にネクタイを締めた紳士的な小鳥です。しかし性格は他の小鳥と比べると荒々しい面が目立ちます。ツピツピ、ジュクジュクと多彩な鳴き声を持つ鳥です。樹洞に営巣しますが、巣箱もよく利用します。冬に限らず1年中身近に生息していますが、冬は先ほどのエナガなど他の種とともに混群といういろいろな鳥が混ざった群れを形成します。混群についてはコラムを参照ください。
枯れ葉をかき分けて餌を探すシジュウカラ♂(千葉県野田市 撮影/安齊友巳)
シジュウカラとほぼ同大で繁殖期にはツツピーと澄んだ声でさえずりますが、冬の時期にはジャージャーと濁った特徴のある声で鳴きます。オレンジ色が鮮やかで、シジュウカラとはまた違った綺麗さがあります。人慣れもしやすいようで、餌台はもちろん、東京都の代々木公園には手乗りヤマガラもいるようですね。ただ野生の鳥が、人間が与える餌に依存してしまうと、様々なトラブルが起こることがあるので注意することも必要です。
混群(こんぐん)とは
混群とは数種類の鳥から成る群れで、秋から冬にかけて形成されます。混群は絶えず移動しながら採餌をしていきます。冬期は、特に太平洋側では雨が少ないため、公園の水たまりや池などで水を飲む姿も観察できることが多いです。一度通り過ぎた群れでも、根気よく待っていれば再び目の前に現れるかもしれません。
混群を形成するシジュウカラやヤマガラなどのシジュウカラ科の鳥は、総称してカラ類と呼びます。これらカラ類のなかで、ヤマガラやコガラなどは貯食する鳥として知られています。貯食とは木の幹の隙間や地面などに餌を蓄える行動のことで、カラスの仲間も同じような行動をします。混群も貯食も餌資源の乏しくなる厳しい冬を乗り切るための鳥たちの知恵と考えられています。冬の混群を観察しているとこっそりと隠してあった餌を取り出す姿を見ることができるかもしれません。
他にもコゲラといったキツツキの仲間やメジロも混群に加わります。一気に多くの種類の小鳥を観察できる冬はお得な季節ですね。
以上、冬に観察できる小鳥類をご紹介しました。きっと見たことはあるけど名前は知らなかったという野鳥もいたかもしれません。過去のトピックスでも頻繁に紹介していますが、冬は野鳥観察にはもってこいの季節です。寒い冬をたくましく生きている野鳥の姿を見に出かけてみてはいかがでしょうか。くれぐれも自分が風邪を引かないように…。