いざ姿を探そうと思っても、ポイントがわかっていないと見つけられない野鳥たち。
今回は初心にかえって、野鳥観察をテーマとします。
みなさん、愛鳥週間(バードウィーク)はご存じですか。毎年5月10日から16日までがその期間とされており、野鳥に関する普及啓発のため、様々な行事が行われています。 ところが、この時期、鳥のさえずる声はよく聞こえるのですが、繁殖のために警戒心が強くなっている上に、新緑が生い茂って鳥たちを見つけることが難しく、野鳥観察の初心者のなかにはリタイアしてしまう人が少なくありません。
これからの落葉の季節は、林が透けて見えるので、野鳥観察に適した時期といえるでしょう。今回は、春にリタイアした人たちが再チャレンジできるよう、身近な鳥たちを例にあげながら、秋から冬にかけて楽しく野鳥の観察ができるポイントについてご紹介します。
それでは、双眼鏡と図鑑をもって、まずは外に出てみましょう。さて、どこに行きますか?公園、水辺、ちょっと離れた郊外の里山?
鳥の観察といっても、ただ歩いているだけでは見つかりません。秋になると落葉樹の葉は落ちて、見通しが利くようになるとはいえ、なかなか見つからないのが野鳥です。
そんなとき、まずは耳を澄ませてください。街中の音に混ざって鳥の鳴き声が聞こえませんか?聞こえてきたらしめたもの。その声の方角をよーく探してください。さえずりならまず木のてっぺん。地鳴きなら木の茂みの中。ほら、茂みから鳥が飛び出した!どんな飛び方しているでしょうか?
上ばかりではありません。足元も見てください。餌を探して地面を移動している鳥もいますよ。
秋や冬に見つけやすい鳥としては、小さな猛禽類として知られているモズがあげられます。モズは秋になるとオスもメスもそれぞれ単独で行動し、冬を乗り切るためのなわばりをつくるため、オスメス関係なくかなり激しくなわばり争いを行います。高鳴きはそのなわばりを宣言するための鳴き声ですから、オスメスともに発声します。特徴的な声なので、この声を聞いたら、木の上の方を見てください。よく通る声ですから、鳴いている方向に当たりを付けてその周辺を探すと見つけやすいでしょう。
笹薮の中から声が聞こえます。「チャッ、チャッ」ウグイスです。「チチッ チチッ」春先には木の上でさえずっていたホオジロも、さえずっていないこの時期には、草藪の中を地鳴きしながら移動しています。
海岸沿いでは、澄んだ賑やかな声で鳴く鳥を見かけます。イソヒヨドリです。この鳥も屋根の上、堤防の上など開けた場所で鳴くことが多いので、声を頼りに目立った場所を探すと見つけることができます。
この季節、池や貯水池などに行くと、その土手や、池の中の倒木の上で鳥たちがひなたぼっこしているのを見ることができます。まだ、越冬のためにやってくるカモたちが来ていないため、ほとんどは留鳥のカルガモです。「ケケケケケケケケケ」と、大きな声で鳴き、カモに似た形態をしているのがカイツブリという鳥です。水面上を羽ばたきながら走るように移動し、着水後スーッと気持ちよさそうに泳ぎます。餌をとるために水中に潜るので、注意してみていないと見つかりませんよ。
さて、一方、低木の茂みの中はどうでしょう。秋から冬、公園のベンチでひなたぼっこなどをしていると後ろの茂みで「ガサ、ガサ、ガサ」と、まるで小動物が歩いているような足音が・・・。思わずそーっと身を翻し、その動物を見つけるべくじーっとしていると、低木の下から出てきたのはツグミ、なんてことがよくあります。ツグミは、落ち葉の下にいるミミズなどを探し出すため、落ち葉をひっくり返しながら探し回ります。その時の音が、小動物が歩いているような音に聞こえるのです。
同じように、アオジなどもこのような場所で見かけます。アオジも、春にはホオジロ同様に木のてっぺんでさえずったりするのですが、冬には、このような低木の茂みを利用しています。ツグミのように落ち葉をひっくり返すような行動はしないため、少し見つけにくいですよ。
郊外の里山の藪ではコジュケイ、キジなど、もう少し大きな鳥たちが藪を利用しています。ただ、これらの鳥は、声は聞けども姿は見えずで、簡単には見ることができません。まずは、声を聞き分けることからはじめましょう。
鳥を見つけたら、飛び方にも目をこらしてみましょう。いろいろなパターンがあります。代表的な飛び方について紹介します。
羽を羽ばたかせながら飛ぶ方法。スズメやキジバト、カラス類などに代表されます。多くの鳥がこの飛び方で飛翔します。ただ、体と翼の大きさが種類によって違うためでしょうか。せわしなく羽ばたいて飛翔するスズメなどの小鳥とゆったりと羽ばたくカラス類など、飛翔時の羽ばたく回数に違いがあるため、飛んでいる姿の印象はだいぶ異なって見えます。
羽ばたきと休憩を交互に行うような飛び方で、羽ばたいて上昇し、休んで下降する動きを繰り返し、波のような動きに見えることから波状飛行と呼ばれています。みなさんの庭先の木の実を食べに来るヒヨドリが代表格でしょうか。そのほかにはキツツキ類やセキレイ類でも見られます。
羽ばたかずに滑空しながら飛ぶ方法。この方法では、大きな鳥が体力を使わずに飛ぶことができます。上昇気流を捕らえるために、羽ばたきと滑翔を繰り返しながら飛ぶこともあります。
上昇気流を利用して翼を全開に開いて上空に上昇する飛び方。アホウドリでよく知られた飛び方なのですが、この方法は上昇気流がなくても羽ばたかずに数百キロを飛翔することが可能だと言われています。すごいですよね。
空中の1点に止まる飛翔方法で、カワセミやミサゴなどが餌を捕獲するときなどに見ることができます。
鳥は、いつも飛んだり、木にとまっているわけではありません。鳥だって、地上を移動するのです。鳥の歩き方は、大きく分けると2通りにわけられます。どんな鳥が、どのように地上を歩いているか、よく見てみましょう。
人の歩き方と同じように足を左、右と交互に出して歩く歩き方で、ハト類やセキレイ類でよく見られます。カモ類も地上に上がったときはウォーキングで歩きます。
遊具に同様の名前の物がありますが、その遊具と同じようにぴょんぴょんとジャンプするような歩き方で、スズメやホオジロの仲間のアオジなどに見ることができます。
一般的に、ウォーキングよりも小回りがきくことから、小さな鳥はウォーキングよりもホッピングをする鳥の方が多い傾向にあります。
カラス類などは、器用にもホッピングもウォーキングも両方の歩き方をします。
ハシブトガラスのウォーキング(埼玉県春日部市 撮影/安齊友巳)
ハシブトガラスのホッピング(埼玉県春日部市 撮影/安齊友巳)
このような飛び方の違いや歩き方の違いは、それぞれの鳥の生息する環境、どのような餌を食べるか、鳥の大きさ、翼の形などからもっとも自らの生活に合うように適応してきたと考えられます。
ベテランの野鳥愛好家の方のなかには、飛び方、羽ばたき方、その大きさや鳥の形などから何の鳥かわかるような方もいますよ。
鳴き声を勉強したいなら、サントリー愛鳥活動サイトの「日本の鳥百科」の音源で、鳴き声などを聞き比べてみましょう。ベテランの人や観察会などで情報を仕入れるのも近道ですよ。
初心者には、鳥を見つけるのも一苦労ですが、百里の道も一歩から。まずは、タンスの肥やしになっている双眼鏡を引っ張り出して、秋の野山に繰り出してみませんか?