私(筆者)は千葉県のなかの東京に近い場所に住んでいます。以前は工場地帯だった場所に建てられたマンションの9階です。
家の近辺では、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、シジュウカラ、オナガなどがよく観察されます。北側には川が流れているので、カモメや冬になるとカモ類も多く観察されます。
話は少しさかのぼりますが、2010年2月のことです。朝日の差し始めたベランダに眼をやりながらボーっとしていると、上の階から小さな塊がスーッと落ちてきて、ベランダのカゲツ(花月)(別名で金のなる木)の方へ……。
よく見ると、それはメジロでした。こちらに引越してすでに11年にもなるのに、近所でメジロを見たことがなかったのでびっくり。いえ、それよりも、9階と言えば、地上から約25mの高さ。そんな高いところにメジロが来るなんて!
2月という時期、ようやくウメの開花が見られるようになったころで、まだ虫たちも土の中。鳥たちにとってはあまり餌の無い時期です。そんな時、花の蜜も餌として利用するメジロはマンションにあるベランダの花に目をつけたのかもしれません。しばらく蜜を吸っていたメジロは、満足したのかスッと下のほうにすべるように飛んで行きました。きっと、マンションの階を上から順に降りながら花の蜜を吸っているのではと推察しました。
このマンションの場所はもともと工場地帯だったので、煙突以外の高い建物は無かったようです。人が造ったマンションという建物の中に、自分たちの餌となるものを見つけてそれを食べにくる。環境にどんどん適応していく動物たちの一面がうかがえます。
高い建物と言えば東京ではなんと言ってもスカイツリーですね。その高さは634mもあります。皆さんもご存知のようにこの建物は電波塔としての役目を担っていて、この高さを活かして遠くまで電波を飛ばすことができるそうです。
ところで、この高いスカイツリーを利用している鳥がいるということはご存知ですか?実は、スカイツリー南側の高さ25m部分にあるひさしをカワウが休憩場所として使っているそうです。近くに川があるので、そこでの食事の後の休憩場所に使っているのでしょうか。どうやら東京周辺では12月は繁殖期の始まりで、集団営巣地には繁殖活動をするカップルがいるため、若いカワウにとっては居づらく、このようなタワーを休息場所として時間をつぶしているのではないかとも言われているようです。冬の間には、路上に「糞注意」の看板もでて、警備員が配置されて、来客者に上から落ちてくる糞に対して注意喚起をしていたそうです。あんな上から落ちてきた糞に当たったとしたら、ウン(運)がつくかもしれないですね。
最近は、都市部にも大小多くの公園があり、人々の憩いの場となっています。そして、植樹された木々が定着して大きくなり、様々な昆虫なども生息するようになったので、それらを食べる小鳥たちも増えてきました。小鳥たちは、様々な場所を住処として活用しているのですが、近年では、その小鳥たちを餌とするハヤブサなどの猛禽類の都市部への進出が見られます。
都市で暮らすハヤブサの巣は、ビルの屋上にある広告塔などを利用して作られます。ハヤブサにとっては、このようにビルが林立する環境が、ある意味本来の営巣場所であった海岸の崖や見晴らしの良い高木といった環境と似ているように見えるのか。それとも、都会に餌となる小鳥が増えたため、背に腹は変えられないと言った心境なのでしょうか?
この様に、皆さんの住んでいる周りにも、人が造った環境を利用している鳥たちがきっといるはずです。いつも通っている通学路、通勤途中、ちょっと足を止めて見てみませんか?
ちなみに、我が家のベランダでは、メジロの後にカタバミの実を食べにスズメが来ていたのが確認されました。そこで、今回の記事を書くにあたり、ベランダにカメラを設置してそこにやってくる鳥を撮影しようとしたのですが、残念ながら今回の記事には間に合いませんでした。今後、しばらくカメラを設置して、鳥を撮影することができれば、このホームページでお知らせしたいと思います。(一般財団法人自然環境研究センター事務局 鈴木隆)
最近では、安価な金額の自動撮影カメラが販売されています。私の利用した自動撮影カメラは、熱を感知して自動で撮影するカメラです。センサーの感知範囲内で熱線の変化(動物が発する熱に限らず、植物が揺れて葉の表面から反射する光量の変化など)を感知すると撮影を開始します。皆さんも自宅にやってくる鳥を撮影してみませんか?(注)餌付けはしないで撮影してくださいね。
自動撮影カメラは、人が頻繁に行けないような場合でもその威力を発揮します。最近では、無人島にいる鳥たちを確認することに役立てられています。鹿児島県のトカラ列島や小笠原諸島の無人島では、自動撮影装置を設置し、撮影された鳥たちを確認することにより、その場所の鳥類相を把握する試みがされているようです。
わざわざ人が出向いて確認しなくても長期間にわたってそこにいる鳥を記録してくれるわけですから、凄いですよね。ただし、撮影された膨大な数の画像をチェックするという作業が残っていますが……。
自動撮影カメラで撮った動画例(撮影/JWRC)