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3月 外来鳥がやって来た なぜ外来種が問題なのか


近年、外来種問題に関する報道を目にする機会が増えてきています。
外来種とは何か?
外来鳥(外来種の鳥)には、どのようなものがいるのか?


ドバトも外来種!

 外来種とは、例えば外国から日本へといったように、もともとの生息地から移動させられて本来の生息地以外の地域に住み着いた生きもののことを言います。移動させられた理由としては、産業や愛玩用に利用するための意図的な移動、または荷物などへの混入による非意図的な移動がありますが、どちらも自力ではなく、人間の活動に伴って移動させられたという共通点があります。
 それでは、鳥類の外来種にはどのような種がいるのでしょうか? よく知られているものとしては、公園などで見ることのできるカワラバト(ドバト)が有名で、すでに奈良時代には持ち込まれていたとされています。神社仏閣など「おどう」に住み着くことから、「どうバト」と呼ばれていたものが後に「ドバト」の語源となったのではないかと言われています。

 里山などで「チョットコイ、チョットコイ……」と聞こえる大きな鳴き声を聞いたことがありませんか。キジの仲間のコジュケイという鳥です。この鳥も実は外来種で、大正時代に狩猟用として中国から持ち込まれ放たれたものが、自然に増えたとされています。

ドバト(東京台東区 不忍池)
ドバト(東京台東区 不忍池)


コジュケイの鳴き声





なぜ外来種が問題なのか

 自然環境は、そこに生息する生きものたちが長い時間をかけて作り上げた多様な関係(生物多様性)の上に成り立っています。外来種のなかには、もともといた生きものを食べてしまったり、生息場所を奪ったりして、自然環境等に大きな影響を与えるおそれのあるものが存在します。それらの外来種を特に「侵略的外来種」といい、生態系影響の原因の一つとされています。そのため、環境省は平成17年に外来生物法という新たな法律を制定しました。そして、特に侵略的な外来種を「特定外来生物」に指定して、輸入や飼育(栽培)、生きたままの運搬、野外に放つ行為などを原則禁止しています。
 鳥類では、ガビチョウ、カオグロガビチョウ、カオジロガビチョウ、ソウシチョウの4種類が特定外来生物に指定されました。すべて中国から東南アジアに分布するチメドリ科の仲間で、ペット用等に輸入されたものが遺棄されて定着したとされています。現在、ガビチョウは南東北から関東甲信東海と九州に、ソウシチョウは関東以西、カオグロガビチョウとカオジロガビチョウは関東の一部地域に定着していることが知られています。
 これらの種は、雑木林などの環境を好み、林床の藪などで繁殖します。そのため、生息環境が重なるウグイスなどの在来種に対して、悪影響を与える可能性があると考えられているほか、実際ガビチョウについてはハワイにおいて在来種への影響が確認されていることなどが指定の理由とされています。

カオジロガビチョウ(埼玉県深谷市 利根川河川敷) ソウシチョウ(東京都三鷹市 井の頭自然文化園)
カオジロガビチョウ(埼玉県深谷市 利根川河川敷)
ソウシチョウ(東京都三鷹市 井の頭自然文化園)
真冬なのに…。

 非繁殖期である秋から冬にかけて、鳥たちは地鳴きと言って「チッ」とか「ジャッ」とか、基本的に特徴の乏しい地味な鳴き声しか出さなくなります。

 真冬2月の鳥類調査中、林の中からクロツグミに似たとても美しく大きな鳴き声が聞こえてきました。夏鳥であるクロツグミは絶対にいない時期でもあり、あわてて声の方向へ双眼鏡を向けたところ…。飛び込んできたのはガビチョウの姿でした。その鳴き声を期待されて輸入されただけあって、この鳥は季節に関係なくさえずるようです。鳴き声は華やかではありますが、なんとも季節感を混乱させる出来事でした。

ガビチョウ(山梨県西湖 野鳥の森公園)
ガビチョウ(山梨県西湖 野鳥の森公園)


ガビチョウ



クジャクも問題に!?

 特定外来生物に指定されてはいないものの、一部地域などでその影響が懸念されている種類をいくつか紹介します。

<インドクジャク>

 雄が美しく豪華な羽を広げて求愛する姿が有名な、動物園などでもおなじみの鳥です。「えっ!クジャクが問題になっているなんて…」と思われる方も多いかも知れません。実は、沖縄県の宮古島、石垣島や西表島などの八重山の島々、日本最西端の与那国島など多くの島嶼で問題となっています。農作物や牛の飼料を食べ荒らしたり、希少な昆虫などの小動物を食べてしまうなどの被害が報告されています。もともと観光施設などで飼われていましたが、台風によって飼育小屋が壊れて逃げ出したものが野生化したとされています。現在、宮古島や小浜島、黒島、新城島、与那国島などで駆除が行われています。

インドクジャク(沖縄県竹富町 黒島
インドクジャク(沖縄県竹富町 黒島)

<シジュウカラガン大型亜種>

 冬鳥として日本にごく少数が飛来するシジュウカラガンと比べると色彩や体型が異なり、体のサイズも遙かに大きく別の亜種とされています。河口湖(山梨県)や丹沢湖(神奈川県)などで確認されており、いずれも飼育個体が野生化したものと考えられています。現在は個体数が少ないため、めだった被害はないものの、今後数が増えた場合、在来の亜種との交雑による遺伝子かく乱や農作物を食べ荒らすなどの被害が懸念されています。数が少ないうちに捕獲するなどの対策が求められています。

シジュウカラガン大型亜種(千葉県我孫子市 手賀沼)
シジュウカラガン大型亜種(千葉県我孫子市 手賀沼)

 鳥に限らず、日本では多くの外来種が住み着いて問題となっています。しかし、いま外来種として問題とされている生きものたちも自らが望んで日本に来た訳ではなく、彼ら自体に罪はありません。問題は故意であれ無意識であれ、持ち込んでしまった人間側にあります。これ以上、不幸な生きものを増やさないためにも、皆さんひとりひとりがよく考えて行動することがとても大切です。



((財)自然環境研究センター上席研究員 中島朋成)

コラム 意外と長寿な鳥たち
コバタン(神奈川県川崎市 夢見ヶ﨑動物公園)
コバタン(神奈川県川崎市
夢見ヶ﨑動物公園)

 セキセイインコなどペットショップなどで見かける鳥たちが、けっこう長生きなのを知っていますか?
 セキセイインコやブンチョウ、カナリアなどは10年くらい生きると言われています。大型のインコやオウムなどは、さらに長寿で70~80年と、ほぼ人と同じくらいの寿命だと言われています。そのため鳥を飼う場合は、最後まで責任を持って面倒をみられるかどうか、よく考えてから結論をだしましょう。