調査中に録音したウズラの声
音声の最初と最後あたりに2回鳴いている
御吉兆(ゴキッチョウ)!御吉兆!。
河川敷の草地から鳴き声が聞こえます。これはウズラの声です。ウズラはキジの仲間ですが尾羽は短く、20cm程度の大きさの鳥です。
ウズラといえば家禽のウズラが生んだ卵を連想しますが、実はもともとウズラは日本在来の野鳥です。家禽のウズラは野生のウズラを品種改良したもので、日本人が家畜化した唯一の野生動物だといわれています。ただし野生のウズラは数が少なく、かなり年季の入ったバードウオッチャーでも見たことのある人は少ないでしょう。
野生のウズラは一昔前には全国的に見ることができたようですが、最近では生息場所である草地が急速に減少しているためか個体数が減り、なかなか見かけなくなりました。このため、環境省のレッドリストでは、平成18年の改訂で情報不足(DD)から準絶滅危惧(NT)というランクに引き上げられ、平成19年から5年間狩猟が禁止されるなどの措置がとられています。
これまでの調査によると、北海道や青森で繁殖したウズラは関東や東海などに移動して越冬していますが、九州で冬に見られるものは朝鮮半島から冬鳥として渡っていると考えられています。あの丸っこい体型でけっこうな距離を渡るのですね。
ウズラは草の中に潜み、じっとしてなかなか姿を現しませんし、その鳴き声は他の鳥に比べて地味なので、一般の人に発見されることがほとんどありません。このため、最近ではどこにどのくらいの数が生息しているのかなど詳しいことはわかっていません。
それでもなんとか情報を集めようと、ある調査方法を試みているところです。それは、ウズラの声をテープレコーダーで流すのです。繁殖期にウズラが生息していそうな草地に向けて実験的に鳴き声を流すと、鳴き返してきたウズラがいて生息を確認することができました。まだ、調査方法としてはしっかりと確立されていませんが、誰にでもできる手軽な方法です。今後この調査をいろいろな場所でやれば、ウズラが日本のどこで繁殖しているのかが分かるようになるかもしれません。
北海道や青森で繁殖をするウズラは、5月ごろに南から移動してきます。もしかしたら皆さんの周りの河川敷や牧草地などにも立ち寄ったり、繁殖しているかもしれません。「御吉兆」の声にちょっと耳を傾けて探してみませんか。(自然環境研究センター主席研究員 安齊友巳記)
御吉兆!とめでたい鳴き声をあげることから、江戸時代には武将たちに珍重されたそうです。そのころはウズラの鳴き声を競う「鶉(うずら)合せ」が盛んに行われ、ウグイスよりもウズラの鳴き声を最上のものとしたという記録もあります。