東南アジアなどの南の国で冬を過ごし、暖かくなると繁殖のために日本に渡ってくる鳥のことを夏鳥といいます。代表的な夏鳥であるツバメは、2月の中旬には沖縄地方に、3月には関東地方に、4月の下旬には北海道地方に渡ってきて、桜の開花とほぼ同時に日本列島を北へ移動しているようです。夏鳥というには少し早いように感じますが、地域によっては、もうツバメが渡って来ているところもあるのではないでしょうか。
日本で私たちが一般に慣れ親しんでいるツバメの他に、イワツバメ、コシアカツバメ、ショウドウツバメ、リュウキュウツバメの4種を日本では見ることができます。ツバメやイワツバメは日本全国に広く渡来してきますが、コシアカツバメは主に西日本で、ショウドウツバメは北海道でしか繁殖しません。リュウキュウツバメは奄美・沖縄地方で一年中見られるツバメです。
彼らの巣もまた、種によって異なります。ご存知の通り、ツバメは人家の軒下などに、泥や枯れ草に唾液を混ぜてお椀のような形をした巣を作りますが、コシアカツバメはとっくり状の巣を作ります。
巣作りのなかでもかわっているのはショウドウツバメです。春、北海道に渡ってきたショウドウツバメは、河岸などの土崖に毎年新しい穴を掘って巣を作り、集団で繁殖します。ただ、近年は河川改修などが進んだ影響で、巣づくりに適した土崖が減少し、住宅難に苦しんでいるようです。巣づくりは雌雄の共同作業で行われ、その穴の深さは1mに達するものもあります。崖に何十もの穴があき、その周りをたくさんのショウドウツバメが飛び回る光景は圧巻です。
この疑問への答えとなるような調査を、日本野鳥の会大阪支部の福岡さんが行っています。1989年より約10年間に渡って、オス206羽、メス207羽、ヒナ1176羽に足輪をつけて帰還状況を調べたものです。結果、同じ巣に帰還する割合はオスで13.5%、メスで7.9%という結果だったそうです。また138ペアを対象にして翌年にペアとなる確率を調べたところ、同じペアとなったのは8ペアのみで、そのうち前年と同じ巣を利用したペアは3ペアのみという結果が得られたそうです。
毎年同じ場所に帰ってきているように見えるツバメですが、実際は前年とは異なった家族であることが、ほとんどのようですね。
ツバメが渡る頃には、他の夏鳥も渡りをします。目的地に着くまでは、何度か休みながら日本列島を北上します。そのため、繁殖期には奥山でしか見られないような鳥が、渡りの時期には市街地周辺の公園でも見られたりします。また、繁殖期には北海道でしか見られないような鳥でも、渡りの時期には本州で見られることもあります。ショウドウツバメも運が良ければ本州で観察できるかもしれませんよ。
ツバメを含めて春から初夏にかけては、鳥たちの子育ての季節です。この時期には、近所の公園や道ばたなどでかわいいヒナが落ちている場面に出会うことがあるかもしれません。でも拾うのは少し待ってください。野鳥のヒナはまだ上手に飛べないうちに巣立つことがあります。明らかにケガや病気でなければそのヒナは巣立ったばかりのヒナで、近くで親が見守っています。親とヒナを引き離さないように気をつけたいものです。