秋になると遠くシベリアのほうから日本に渡ってきて、春になると帰っていく鳥を冬鳥といいます。初冬は日本各地へ、たくさんのガンやカモが渡って来る季節です。
日本に渡ってくるガンやカモの仲間については、昭和47年から毎年1月中旬の決まった日に全国一斉調査が行われています。最近10年間の結果をみると、ハクチョウやカモの仲間はほぼ同じ数が渡ってきているようですが、ガンの仲間は少しずつ渡ってくる数が増えているようです。また、カモの仲間ではマガモが最も多く渡ってくるのですが、その数は徐々に減少しているようです。
ところで、みなさんはラムサール条約をご存知ですか? 水鳥の生息地として重要な湿地を守ることを目的として制定されており、およそ160の国々が関わり、世界中で1900ヶ所以上の湿地が指定されています。日本では1980年に釧路湿地が最初に指定された後、少しずつ増えて現在では37ヶ所が登録されています。
たとえば宮城県の伊豆沼・内沼はそのうちの一つで、たくさんのマガンが渡ってくることで有名です。およそ5万羽のマガンが渡来し、重要な越冬地となっています。昼の間は周辺の水田で採餌して、夕方になるといくつもの小さな群れが、カギ型の編隊を組んで沼に戻ってくる様子は圧巻です。
水辺の冬鳥は、ラムサール登録湿地のような有名な場所に行かなくとも見ることができます。近くにある公園の池や、水路などを覗いてみてください。意外とたくさんのカモ類が近くにいることに気がつきます。
カモ類というと、池や湖で水面に浮いているものや、底に生えている水草などを食べていると思われるかもしれませんが、ヒドリガモは陸地の草も好んで食べます。時には小麦畑の若葉なども食べてしまうため、農業被害として報告されることもあります。
カモ類のオスはカラフルな色彩のものが多いので、ただ眺めているだけでも心が和みます。また、しばらく見ていると、初めての人でもすぐに何種類かいるということに気がつきます。最近はいろいろな鳥の図鑑も出版されていますから、図鑑片手にカモの名前を調べてみるのも楽しいものですよ。
これまで、鳥の移動を調査するときには足環などを着けて放す方法で、2点間の移動が分かるだけでした。しかし最近では大型の鳥には発信機を装着して、どのような渡りのルートを通っているのかを調べることができるようになりました。このため、ハクチョウの仲間が北海道からサハリンを経由して北上することや、伊豆沼のマガンが北海道を経由して、オホーツク海を一気にカムチャッカ半島へ渡ることなどが、徐々に分かるようになってきています。