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「日本雁を保護する会」が山階芳麿賞、会長の呉地正行さんが
ラムサール賞・ワイズユース(湿地の賢明な利用)部門をW受賞しました。

 

サントリー世界愛鳥基金の助成先団体である「日本雁を保護する会」が(公)山階鳥類研究所から2022年度の「山階芳麿賞」を、会長の呉地正行さんがラムサール条約「ラムサール賞・ワイズユース(湿地の賢明な利用)部門」をW受賞されました。
呉地さんと「日本雁を保護する会」は、40年以上にわたって、湿地に生息し繁殖する複数のガン類の保護・復活と生息地の保全・再生に尽力してきました。その活動は日本国内にとどまらず、アメリカやロシアの研究者とともに、幅広い調査・研究と啓発・普及活動を推進し、絶滅の危機に瀕した数種のガン類の羽数回復を実現しました。中には、一度は途絶えてしまった日本への渡りを再開させた種もいます。近年は、東アジア-オーストラリア地域のフライウェイの保護活動にも力を入れています。今回のW受賞は、呉地さんと同会の長年にわたる活動と功績が大きく評価されたものです。

 

「日本雁を保護する会」とサントリー世界愛鳥基金

「日本雁を保護する会」へは当基金が設立された翌年の1991年より助成を開始し、2022年度までに延べ20回3,780万円の助成金を贈呈してきました。1970 年には日本で 5,000羽余りしか確認されなかったガン類が、現在では 20 万羽を越えるまでに復活してきており、半世紀にわたる保護活動の大きな成果に、当基金の助成も少しはお役に立てたのではないかと思っています。この度の2つの受賞は当基金にとっても大変名誉な事であり、心よりお祝いを申し上げます。

 

*山階芳麿賞とは
山階鳥類研究所が「我が国の鳥学研究の発展と鳥類の保護活動に大きく寄与した個人あるいは団体」を顕彰するもので、日本の鳥類学における最も権威ある賞のひとつです。

 

*ラムサール条約「ラムサール賞」とは
ラムサール条約「ラムサール賞」は、湿地の保全と賢明な利用に功績のあった、世界中の個人、組織、政府を称える賞で「ワイズ・ユース(賢明な利用)」「イノベーション」「青年の活動」の3部門から成っています 2022年授与式は今年11月のラムサール条約締約国会議で行われます。

 

日本雁を保護する会 会長呉地正行さんからのメッセージ

サントリー世界愛鳥基金 様
この度、国際的なラムサール条約の「ラムサール賞・ワイズユース(湿地の賢明な利用)部門」を呉地が、また国内の鳥類学で最も権威がある賞の一つの山階芳麿賞を、日本雁を保護する会が受賞し、驚きとともに大変うれしく思っています。今回の受賞では、ガン類の保護・復活と、ふゆみずたんぼの普及と水鳥と農業の共生をめざす長年の取り組みが、評価されました。
これらの取組が継続して実施できたのは、基金の設立当初から私たちの活動をご支援くださった、サントリー世界愛鳥基金様のおかげです。ここに改めてお礼申し上げます。また今後ともご支援もよろしくお願いいたします。

呉地正行さん
日本雁を保護する会 会長 呉地正行さん

7月22日、赤坂御所東邸にて山階鳥類研究所総裁・秋篠宮様から「日本雁を保護する会」に「山階芳麿賞」が贈呈されました。以下は、呉地正行会長からのお礼のご挨拶文です。


第22回山階芳麿賞受賞者挨拶
日本雁を保護する会 会長 呉地正行

 この度は秋篠宮殿下ご臨席の元、鳥類学の分野で最も権威がある山階芳麿賞を、頂くことができ、大変光栄に思っています。
 また今回の受賞が、個人ではなく日本雁を保護する会としての受賞であることは特にうれしく思っています。
 これは長年にわたり、多くの会員とともに行ってきた、日本へ渡るガン類とその生息環境の保護・保全・復元活動全体が評価されたものと考えていますが、この喜びを保護する会の会員全員で分かち合いたいと思います。
 今回、ここ赤坂御用地内で保護する会会長として、秋篠宮殿下から直接山階賞を頂き、感激しましたが、それとともに思いを深めたことがあります。
 それは絶滅寸前のシジュウカラガンを、国内外の多くの方の協力を得て復活させることができたことです。
 その40年にも及ぶ歩みについては、昨年度、保護する会発足50周年を記念して出版した「シジュウカラガン物語」に詳しくまとめてあります。
 シジュウカラガンの回復計画を始めた頃は、日本へ渡来する鳥は最大3羽しかいませんでしたが、その復活に強い思いを持っていたのが、保護する会の創設者で前会長の横田義雄です。
 横田は2003年に98歳で天に召されましたが、生前書き残した著作の中に、「5月9日のこと」という随筆があります 1)
 これは1980年の5月9日に、赤坂御苑で開催された春の園遊会に招かれた横田が、昭和天皇陛下と交わしたガンについての会話を、まとめたものです。その中には陛下ご自身が皇居でガンを飼育されていたことや、シジュウカラガンにご関心があることなどが記されています。会話はここまでなのですが、横田が一番伝えたかったのは、シジュウカラガンを復活させるという「横田の夢」だったと、その心中を述べています。その後シジュウカラガンは見事に復活し、その数は約1万羽まで増え、夢は現実になりました。
 横田が昭和天皇陛下にガンのお話をしてから、42年後の今日、同じ赤坂御用地内で、昭和天皇陛下のお孫様に当たる秋篠宮殿下から、よみがえったシジュウカラガンの取り組みも含めた活動を評価され、保護する会の会長として山階賞を頂けたことは大変感慨深く、何か因縁めいたものも強く感じています。
 本日はこのような素晴らしい機会を与えていただき、ありがとうございました。

2022年7月22日 赤坂御用地内 東邸 2)  にて

1) シジュウカラガン物語(京都通信社)Pl8-22 参照
2) 横田が招待された園遊会会場は、今回の贈呈式が行われた東邸から100mほどしか離れていない。

 

 

◆活動の詳細については、こちら。
ラムサール賞、山階賞 ダブル受賞とシジュウカラガン物語 出典:京都通信社
* 「山階芳麿賞」とは
* ラムサール条約のラムサール賞「ワイズユース部門」とは